建設業許可を取得し、経営事項審査、入札参加資格審査を経て、ようやく入札参加資格者の名簿に登載されたものの、この後は何をすればいいい?どういった流れになるの?という疑問が浮かんでくるのではないかと思います。
そこで入札参加資格を得た後、公共工事を受注するまでを数回に分け解説したいと思います。
そもそも公共工事の実績がないと入札に参加できない?
入札参加資格は手に入れたけど、そもそも実績がない中で入札に参加できるの?といった疑問を耳にすることがあります。
実際のところはどうなのでしょう?
確かに初めて公共工事へ参入していこうとしている多くケースでは、実績がなく、ランクも低めになるため、そういった意味では不利な部分はあると思います。
しかし、だからといってあきらめる必要はありません。
初年度から入札に参加し、結果次第では施工を任される可能性も十分にあります。
初年度でも可能性あり
上記で初年度でも入札に参加するチャンスはあると説明しましたが、どうしてそう考えられるのか、その理由について次のように考えています。
公共工事の発注において多くの地方公共団体等では地元業者を優先するという考え方があります。
地元業者の受注は、その地域の経済振興、地域活性化および税収確保へつながり、自治体にとっても重要な意味を持つためです。
このため、大規模工事においても可能な場合は工区分けによる分割発注を行い、多くの業者へ幅広く発注する(受注機会を増やす)といったことも行われています。
また、災害等の緊急時を想定した場合も、地元に技術を持った業者が存在するのとそうでないのとでは大きな違いがあり、こういった面からも地元業者の育成、発展を目指す必要があります。
こういったことから、自社のランクに応じた規模の工事が発注された場合、入札に参加できる可能性は十分にあり、それに備え準備をしておく必要があります。
初めにすべきこと
入札参加資格審査申請を提出したら、結果通知によって自社の格付け(ランク)、その格付けによって入札参加可能となる工事価格の範囲がわかります。
これを踏まえたうえで何をすべきかというと、まずは自社が今後足を踏み入れる場所がどういう状況なのか調べることから始めます。
入札参加資格審査申請の提出先について調べていくことにより、どの程度のチャンスがあるのか、ライバルはどの程度いるのかといったことを知り、今後の目標を定めていくのです。
発注基準を知る
なかなか目を通すことはないんですが、地方自治体等においては条例・規則・要綱等により入札に関する事項が定められています。
例えば「一定金額以上の工事については一般競争入札で実施する」といった感じです。
このほか、入札参加条件、指名人数、市内・準市内業者の取り扱い等について確認することができます。
特に制限付一般競争入札を多く採用している場合は、その取扱いについての説明がないか注意してください。
制限付一般競争入札の制限条件は発注機関によって様々ですが、地元業者優先となるような地域性における制限がかけられているような場合は、可能性が出てきます
個人的には多くの地方自治体において、一定規模以上の工事は一般競争入札、それ以下の工事については指名競争入札や一般競争入札ではあっても指名条件と同等の格付け要件と地域制限による制限付一般競争入札を採用し地元業者へ発注するといった方法がとられているように感じます。
ただし入札制度ついては透明性、公平性、参加者の機会均等が求められ、様々な入札方式の検討がされていて、入札方式が変わることもあるため注意が必要です。
こういったことを理解し、自社が参加できる工事はどういった発注のされ方が多いのかを知っておく必要があります。
入札情報の確認
ほとんどの発注機関ではホームページ等で現在公告期間中の入札情報および過去の入札結果を公表しています。
これらの情報をチェックしていくわけですが、まずは入札方法に注目してください。
「発注基準を知る」で記載した内容について確認済みでしたら、自社が参加できそうな工事はどういう発注をされるかが把握できていると思いますので、同様の取り扱いをしている工事について内容を確認します。
制限付一般競争入札
制限付一般競争入札の場合は制限事項が何かを確認します。
条例・規則・要綱等ですでに調べた方も、実際の入札公告への記載内容を確認することによってより具体的にイメージがわくと思います。
記載内容は地域性のほか予定価格による格付けの制限、過去の受注実績によるもの等が記載されていますので注意深く自社に当てはめながら確認していきます。
過去の実績等の取り扱いで確認に注意する必要があるのは、その発注機関が過去に発注した工事についての実績を求めているのか、発注者を問わず同種の工事の経験があることを求めているかです。
公共工事は初めてであっても同種の工事の経験、実績を条件としている場合は、参加できる可能性があるので、見落としが無いように確認してください。
そして、この制限付一般競争入札であれば、条件を満たしてさえいれば入札に参加することができます。
つまり、指名を待たなくてもこちらから挑んでいけるわけです。
自治体等によって様々な取り扱い方がありますが、条件を満たすことができそうな制限付一般競争入札が頻繁に実施されている場合は、思ったより早くチャンスが来るかもしれません。
指名競争入札
次に指名競争入札です。
指名競争入札の場合は、指名を受けた業者でないと詳細は閲覧できないと思いますので、過去の入札結果を中心にみていきます。
入札結果をチェックする場合、発注機関が定める条例・規則・要綱等を確認し「工事金額によって必要となる指名の人数」についてチェックしておいてください。
金額によって5者以上、10者以上と指名に必要な人数が決められています。
入札結果を見ていくと、定められた人数ピッタリで実施され毎回参加メンバーの入替があっているケースもあれば、定められた人数以上が参加し毎回同じようなメンバーで入札しているというケースもあるのではないでしょうか。
指名競争入札を採用する場合は、基本的に地元業者より選定している場合がほとんどだと思いますが取り扱いは各自治体等によって様々です。
該当する地元の建設業者が指名基準ギリギリの数しかいない場合、毎回同じメンバーが指名されることになっても仕方ないと思います。
これとは逆に該当する建設業者が多数存在する場合、条件を付け順次入れ替えながら指名を行うといった方法もあるでしょう。
もしくは、人数に関係なく該当する地元業者全員を毎回指名するという考え方もあるかもしれません。
今このサイトをご覧になっている皆様それぞれで状況は違うと思いますが、もし毎回同じような人数、メンバーで実施されている場合は、地元業者全員を選定するといった考え方で入札を実施している可能性が高いので、皆様のランクに応じた工事が発注される場合は指名される可能性が高いかもしれません。
競争相手の状況
ここまでで、自社が参加できそうな入札が行われているかをチェックしました。
さらに確認するのは今後の競争相手についてです。
ここまでで調べた入札結果には、入札参加業者が記載されていると思います。
ここに記載されている業者が、今後の競争相手、つまり同じ格付けに位置する建設業者ということになります。
業者によって、常に最低制限価格ギリギリを狙い、時に失格となっている業者もいれば、予定価格に近い金額で落札と程遠い入札ばかりの業者、工事によって方針を変えてくる業者もいると思います。
競争相手が入札に対しどういった姿勢で臨んでいるのかを想像してみてください。
常に最低ギリギリを狙っている場合は、当然ですが参加した入札すべての落札を狙っていると考えられます。
また、その工事の発注者が予定価格を公表していない場合、設計書から工事価格を積算、さらに最低価格がいくらぐらいかを想定して入札に臨んでの結果といえるため、積算能力も高いと想像できます。
注)予定価格は発注機関によって事前公表している場合とそうでない場合があり、事前公表されている場合はある程度の最低制限価格が予想できてしまいます。
こういう参加者が多数いる中で競争を行う場合は、最低制限価格に近いところで入札する積算能力が求められてきます。
入札の中には、多くの参加者もしくは参加者全員が予定価格を下回らない価格(高い価格)で入札が行われているケースもあるかもしれません。
この場合、施工条件、設計条件が厳しい等何らかの理由があるかもしれません。
こういった空気感を入札結果から感じ取って、自身の本番に備えてください。
まとめ
これから入札に参加しようとした場合に、ここまでの内容を参考に、まず自社が置かれている状況を確認するといったことをやってみてください。
あらかじめどういった形で入札が行われているかをイメージすることで、本番でも冷静に対応できると思います。