特定信書便事業許可申請手続き

長崎県を中心に活動している行政書士のかきたです。

本日は業務に関する話になります。

「特定信書便事業許可」というものをご存じでしょうか。

令和4年3月31日付で公表されている許可業者は全国で586者となっています。

対して全国の行政書士数は令和4年4月1日現在で5万を超えていますので、行政書士でも経験者が少ないレアな業務だと思います。

当事務所では建設業(特に公共工事関連)をメインにしているのですが、昨年、この業務を受任する機会に恵まれました。

無事、許可を取得できたのですが、それなりの時間と労力を要する手続きでした。

事例があまり多くないこともあり、参考になればということで大まかな手続きの流れを紹介させていただきます。

「信書」とは?

まず、許可名称に使われている「信書」というものについてですが、

「特定の受取人1に対し、差出人の意思を表示し、 又は事実を通知する文書」

と郵便法及び信書便法に規定されていて、具体例としては次に挙げるようなものがあります。

  • 書状
  • 請求書の類
  • 会議招集通知の類
  • 許可書の類
  • 証明書の類
  • ダイレクトメール(特定の受取人へ差し出すもの)

近年、役所等で本庁および各支所間で文書のやり取りを外部委託するケースが見られます。

こういった業務を請負う場合も、許可事業者であることが要件となります。

どんな時に許可が必要?

上で説明させていただいた「信書」の送達業務を行う際に必要となります。

以前は「信書」を取り扱う業務は郵便(国)の独占業務とされていましたが、平成15年の法改正により許可を得ることで民間事業者も参加が認められることとなりました。

たとえ運送業の許可を取得していても、それだけでは「信書」の送達業務を行うことはできないため注意が必要です。

許可の種類

信書便の送達に関する許可には「一般信書便事業」と「特定信書便事業」の2種類があります。

一般信書便事業許可

一般信書便許可ですが、全国提供する条件で、全ての信書の送達が可能となる「全国全面参入型」の事業となり、その条件は非常に厳しいものとなります。

一般信書便事業を行う事業者は、現時点で民間事業者はありません。

日本郵政のみの取り扱いとなっています。

特定信書便事業許可

創意工夫を凝らした多様なサービスを提供する「特定サービス型」の事業で、次に掲げる特定信書便役務のいずれかを充たすものとなります。

  1. 長さ、幅及び厚さの合計が73cmを超え、又は重量が4kgを超える信書便物を送達
    【第1号役務】(73cm /4kg超役務)
  2. 信書便物が差し出された時から3時間以内に当該信書便物を送達
    【第2号役務】(3時間以内役務)
  3. その料金の額が800円を超える信書便物を送達
    【第3号役務】(800円超役務)

特定信書便事業許可申請から許可までの期間

ここからは、「特定信書便事業許可申請」手続きについて説明していきます。

まず申請から許可までの期間は1~2か月が標準処理期間とされています。

ただし、これは申請書を受け付けてからの期間で、実際には事前協議期間があるため4ヶ月から半年程度は見ておく必要があると思います。

事業内容によっては更に多くの時間が必要となる場合も考えられるため、許可取得までのタイムスケジュールは注意が必要です。

また、最終的な許可は総務省の情報通信行政・郵政行政審議会により決定されるのですが、この審議は随時行われるわけでは無く、年に3回程度となります。

令和3年度に特定信書便事業許可を取り扱った審議会は6月、11月、2月の3回でした。

令和3年度の開催日程で例えると5月に申請しようとした場合、事前協議、審査の期間を考えた場合、6月の審議会へ間に合わせることはほぼ無理です。

早くても11月、間に合わなければ2月の審議会へ諮問することとなります。

ある程度、長丁場になることを覚悟しておく必要があります。

許可までの流れ

この手続きは事前協議制となっており、徹底した事前協議が行われます。

逆に言うと事前協議でOKが出て、審議会へ諮問するところまでこぎつけることが出来たら、ほぼ許可は取得できると思います。

国の担当者の方も却下されるような内容のものを審議会へ提出するわけにもいかないでしょうし、真摯に向き合って対応してくれます。

大まかな流れは下記のとおりです。

  1. 申請先へ連絡、事前相談
    申請先は特定信書便事業のうちに2以上の総合通信局の管轄区域にわたる役務を提供する場合や国際信書便の役務を含む場合は総務大臣、それ以外は管轄の総合通信局長となります。
  2. 事前協議の開始
    事業計画等必要とされる申請書類のドラフト案を作成し、担当者と事前協議を行います。
    協議によって書類の修正、追加資料の提出などの対応を行い書類を作り上げていくことになります。
  3. 申請書の提出
    十分な協議を行い、内容に問題が無いとなって初めて申請書を提出します。
  4. 審議会への諮問・答申
    提出した申請書により情報通信行政・郵政行政審議会へ諮問し、許可が適当であるとの答申がなされたあと、許可となります
  5. 許可状の交付
  6. 事業開始

申請書類について

提出書類は許可申請書、信書便約款の認可申請書、信書便管理規則の認可申請書といったものがありますが、添付書類を含めなかなかのボリュームになります。

参考までに私が作成したケースでは、申請書類、約款、管理規則等で44ページ、添付した資料等が43ページで合計87ページありました。

私が取り扱った事例では、許可の種類で挙げているうちの「1号役務」のみの申請でしたが、「2号役務」、「3号役務」も提供する等、事業の実施内容によっては、さらに多くの書類を作成する必要が出てくると思われます。

申請書類については記載例含め詳細な手引きが総務省のHPよりダウンロードできますので、一度ご覧になってみてください。

総務省ホームページ(信書便事業に関する申請等の手引)

作成する書類が多いため少々根気が必要ですが、担当の方に相談しながら進めていけば作り上げることは可能だと思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

おわりに

建設業メインの私がこの業務を受任することとなったきっかけは、一度ご挨拶に伺ったことがある他士業の先生からの紹介です。

一度ご挨拶に伺っただけの私を思い出し紹介していただいたことに応えたいという気持ちと、なかなか経験できない業務であったため挑戦することにしました。

「人との繋がりって大切だなぁ」

と改めて感じました。

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