公共工事の入札に参加していると、気になるのが積算ソフトの存在ではないでしょうか。
特に予定価格を事前公表している発注者の入札に参加している方は、必要ないのではと考えるのではないでしょうか。
専用ソフトを使用しての積算とそれ以外の方法を踏まえ、私なりの考えをまとめてみました。
積算の方法
積算を行うには手作業によるものと、専用ソフト(積算ソフト)を使用する方法があります。
私の場合は、積算ソフトと手作業(エクセル利用)の併用で行っています。
積算ソフトだけでも良いのですが、それに頼りすぎたことが原因でミスに気付かないということもあるからです。
ただ、代価表の号数が100を超えてくるあたりで手作業では時間的に厳しくなってきます。
この場合は積算ソフト中心で作成し、確認作業にある程度の時間をかけるようにしています。
本格的に積算へ取り組もうとした場合、するしないは別にして手作業でも積算ができるような知識の取得は必要だと考えています。
積算の必要性
方法はともかく、積算作業の必要性について考えてみます。
予定価格が事前に公表されない入札の場合は、当然ながら積算作業が必要です。
では予定価格が事前に公表されている入札の場合はどうでしょうか。
予定価格が分かっているので、ある程度の「アタリ」を付けて入札金額を決めることはできます。
内訳書の提出が必要ですが、これも落札金額に合わせる形で逆算すれば一応作れます。
ただ、積算の必要が無いかといえばそうでもありません。
積算を正しく行うことにより、その工事での人件費、材料費、諸経費などがどの程度の金額で計算されているのかが分かります。
これにより、どの部分でいくらぐらいの利益が出せそうなのかを検討しその入札への対応を考えます。
最低制限価格ギリギリで落札しても利益が少なそうだから高めに入札したり、見送ったりといった判断を行います。
発注者も人間ですから間違えが無いとは言えません。
明らかに安すぎる設計価格が示されることも考えられます。
こういった工事は避けるべき公共工事です。
「利益を出す」ということを考えると、積算の知識を持って入札へ対応する必要があります。
せっかく落札したのに赤字同然だったという結果は避けなければいけません。
また、下請けへ発注する場合も積算が出来なければ設計に対して妥当な金額かどうかの判断が難しくなると思います。
公共工事を上手に使っていくためには、危ない工事に手を出さないという判断も必要で、そのためには積算技術も必要と考えます。
積算ソフトについて勘違いしていませんか
積算ソフトの説明の前に使用する大前提について申し上げます。
まず、
「積算ソフトは万能ではない」
ということです。
これさえあれば、自動的に工事金額が算出されるぐらいの考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、実際は違います。
積算ソフトを使用しても、それなりの時間はかかりますし正確な積算を行うには積算に対する知識も必要です。
またパソコンを使っての作業となるので、当然ながらパソコンの扱いに慣れている必要もあります。
当事務所でも「積算ソフトを導入したけれど使いこなせない」といったご相談を受けています。
積算ソフトは高額なものが多いため、操作方法や積算知識を学んで使いこなせるかを、まず確認してください。
積算ソフトの使用について
積算作業の必要性についてはすでに述べましたが、実際の積算作業における積算ソフトの活用について考えてみます。
土木一式・建築一式工事などである程度、大規模な工事を手掛ける場合は必要だと思います。
入札参加の格付けが上がり、入札案件が一定規模以上のものになってくると、手作業では追いつかなくなってくると考えられるからです。
専門の積算担当職員を配置できるような会社なら手作業でも可能とは思いますが、ある程度の会社規模になってくると多くは積算ソフトを導入しているのではないでしょうか。
公共工事への取り組みを始めたばかりで、施工規模が小さい内はどちらでも大丈夫だと思いますが、時間的な余裕があれば手作業での積算に取り組んでみてはいかがでしょうか。
設計書への理解度が大きく変わり、発注者のクセ等も気づきやすくなります。
その後、積算ソフトを導入した場合も注意すべき点が分かるので間違えを減らすことにつながると思います。
単価、歩掛データのみの閲覧でも価値あり
公共工事向けとされてる積算ソフトは、公共工事で使用する歩掛、自治体が定めた基本単価、独自単価そして物価資料の単価が登録されています。
更に単価変動に合わせて、更新も行われます。
※更新頻度は積算ソフトによります
物価資料は通常、建設物価調査会と経済調査会がそれぞれ出版しているものが用いられますが、これを購入し続けるだけでもそれなりの費用が必要です。
また歩掛を調べたり施工パッケージ単価の計算には時間と手間が掛かります。
この部分だけでも積算ソフトの利用価値はあると思います。
あとは年間どの程度の回数入札に参加するかで判断されても良いのではないでしょうか。
年に1~2件しか入札に参加しないというようなら、高額な積算ソフトを導入するのはどうかなと思います。
複数の積算ソフトを使った感想
いわゆる御三家といわれる有名どころから、機能を絞って価格を抑えたものまで色々な積算ソフトがあります。
メーカーによっては体験版が用意されていたり、デモンストレーションを行ってくれます。
私自身、業者様が導入されている積算ソフトを使って積算の確認をするといったことも行っているため、複数メーカーの積算ソフトを扱うことが出来ますが、「正しく」使えば積算精度に大きな違いは感じません。
比較的安価な積算ソフトでも、十分に予定価格へ近付けることが出来るものもあります。
高額なソフトでは自動的にやってもらえるようなことを自分で設定する必要があったり、いくつかあった単価計算の違いを修正することで十分に使えました。
私に手作業でも積算できる知識があったため修正出来ましたが、100%ソフトに頼った積算をしていたら「金額が合わない」ということになっていたと思います。
もちろん、高額なソフトにも「ん?」ということが稀にですがあります。
積算ソフトの性能を生かすためにも、自分自身の積算知識を増やす必要があると思います。
積算ソフト購入時の注意点
「正しく」使えば積算精度に大きな違いを感じていない私が積算ソフトを導入する場合、何を考えるかについてです。
まず絶対条件として確認するのが次の5点です。
- 自分が積算するのに必要な公共歩掛が収録されているか
- 自分が積算するのに必要な諸経費計算に対応しているか
- 都道府県単価、市区町村独自単価が収録されているか
- 物価資料(2社)が収録されているか
- 金額の丸め(四捨五入桁数等)細かく設定できるか
とりあえずこれらが揃っていたら何とかなります。
どうしてもの場合は手計算で補います。
次に確認するのが単価データの更新頻度です。
毎月なのか4半期ごとなのか必要に応じて検討します。
更新頻度は選択できるメーカーもあり、当然ですが頻度が多いほど金額も高くなります。
最後にこれがあればずいぶん楽というのがPDF取込み機能です。
これはPDFの縦覧設計書を勝手に読み込んでくれる機能で、金額は入らないとしても入力手間がずいぶん削減されます。
中には、単価コードを読み取って金額まで自動的に入力する機能が付いているものもあります。
細かくいうとまだまだありますが、とりあえず上記の内容について必ず確認したうえで、金額、サポート体制等によって選ぶと思います。
まとめ
たとえ予定価格が事前公表であっても積算は必要だというのが私の考えです。
その積算作業には時間と手間が必要となりますので、利用頻度によって導入を検討してみてはいかがでしょうか。
私が公共工事メインの建設会社で働いていたら、積算ソフトの導入を求めるでしょう。
ただ何度も言いますが、積算精度向上を求めるなら手作業でも積算を行えるような知識習得も必要だと思います。